「自分らしさを大切にして、自尊感情を高めれば、子どもたちは自殺しない」というのは、心の複雑さを認めない考え方に過ぎない。小学生という未熟な成長段階で、競争や失敗を経験することはとても大事だ。未熟なのだから、たくさん失敗して、先生に叱られて、恥ずかしい想いをする。そんな経験が大切なのだ。未熟なのに、プライドが高く、注意さえる事さえ耐えられない、なんて、高慢と言わず、何だというのか。

未熟な時期に失敗する経験を避けると「心の予防接種」を打つことができない。どんな人生にも逆境や困難はあるが、それを乗り越えて生きていくという思考回路が構築されていかない。

日米で大ヒットした、アメリカドラマ「冒険野郎 マクガイバー」を知っているだろうか? マクガイバーの最大の特技は、困難に陥ったとき、手近な材料と豊富な科学知識の応用で切り抜け、数々の事件を解決すること。この時彼は「考えろ 考えろ 考えろ 考えろ」と繰り返す。

このマクガイバーの思考は、自分が考えれば、この困難を乗り越えることができると信じているために、構築された思考回路なのだ。この「自分を信じる力」とは、自己肯定感ではなく、「自己効力感」という。自己効力感「自分がやれば結果が変わる」という感覚。自分を信じる力。

自己肯定感は、外部環境によって育まれるので、逆境に陥った時に、もろくも崩れ去るが「自分を信じる力」は他人が何を言おうと私は私を信じているという力なので、簡単に外部の何者にも奪えない。

言い聞かせるだけではだめなのだ。自分を変えなければいけないと思うほど傷ついて、本当の反省をすることによってのみ、育つ力。